齋藤千歳の感動表現|イラジエーションの発生しないデジタルでは星撮影にソフトフィルターKenko MC プロソフトンは必須
みなさん、撮ってますか!
マイナス20度近い条件での星景撮影は、寒さによる指の痛みとの戦いです。
それでも、北海道の夜空は魅力的で夜な夜な撮影しています。
「ぼろフォト解決シリーズ&Foton電子写真集」というカメラ・写真関連の電子書籍を出版している齋藤千歳です。
サムヤンレンズなどを中心にケンコー・トキナーのレンズ&フィルターブログでレンズの記事を連載させていただいております。
今回が初のフィルターブログです。
レンズブログに引き続き、フィルターでもよろしくお願いします。
使用レンズ:SAMYANG AF35mm F2.8 FE
使用フィルター:KenkoMC プロソフトン(B)N
◎焦点距離:35mm相当 絞り:F/2.8 シャッタースピード:30秒 ISO感度:800 (35mm判フルサイズのカメラで撮影)
MC プロソフトン(B)Nを使ってRAW撮影。RAW現像時やレタッチ処理によって星空を印象的に仕上げました。
フィルターの記事を書けることを、とてもうれしく思っています。
みなさま、ありがとうございます。
カメラのデジタル化によって「RAW現像やフォトレタッチで、なんでもできるのだから撮影時にフィルターを使う必要はない」なんて思っている方もいるかもしれません。
しかし、そんなことはありません。
なんでもデジタルの後処理で行えばいいというわけではないのです。
撮影前から写真の完成形を意識して、撮影時にできることは撮影時に、後処理で行うほうがよいことは後処理で行うのが理想だと思います。
上手にフィルターを使うことで、写真をより印象的に仕上げることができるはずです。
写真を印象的に仕上げてくれるフィルターのなかでも、星空や星景写真を撮影するなら必須のフィルターがKenko MC プロソフトンです。
KenkoMCプロソフトンには、MC プロソフトン(A)NとMC プロソフトン(B)N、さらにKenkoPRO1D プロソフトン[A](W)があり、ソフト効果はAよりもBが強くなっています。
PRO1D プロソフトン[A](W)とほかの違いは、フレアの影響を抑えるデジタルマルチコートが採用され、広角レンズで使用したときにも画像の四隅に暗い影が発生するケラレの発生しづらい薄枠の高性能なプロ仕様になっている点です。
ソフトフィルターは各社から発売されています。
しかし、ソフト効果によるぼけの発生の仕方が星の撮影に向いているといわれているのは、KenkoMC プロソフトンとLEEの軟焦点効果用のソフトフィルター(ポリエステル製)で星撮影の定番といわれています。
LEEのポリエステル製角形フィルターは、やや上級者向けの製品なので、また機会をみて紹介します。
ソフト効果などは、フォトレタッチソフトなどでも簡単に行えますし、別に星の写真をソフトにする必要はないのではないでしょうか。
それでもKenko MCプロソフトンが必須といえる理由は、カメラのデジタル化に関連します。
使用レンズ:SAMYANG AF35mm F2.8 FE
使用フィルター:なし
◎焦点距離:35mm相当 絞り:F/2.8 シャッタースピード:30秒 ISO感度:800 (35mm判フルサイズのカメラで撮影)
フィルターなしで、RAW現像やレタッチでの後処理もしていない状態の画像。写っている星の大きさに違いがほとんどないのが気になりませんか。
カメラのデジタル化で星の撮影からなくなった大きな要素がふたつあります。
「相反則不軌」と「イラジエーション」です。
フィルムカメラでは、露光時間(シャッタースピード)が極端に短かったり、長かったりすると相反則不軌が発生します。
一般的にカメラは、例えばF1.4でISO 100、1/2秒で得られる画像の明るさとF2.0、ISO 100、1.0秒……、F8.0、ISO 100、16秒で得られる画像の明るさは、同じになるはずです。
デジタルからカメラをはじめた方やデジタルでしか星を撮影しない方は、これを当然だと思っているのではないでしょうか。
これを相反則といいます。
デジタルでは、長時間露光でもこの相反則が成り立ちます。
一方、フィルムでは種類にもよりますが、1秒を超えるような長時間露光では、相反則が成り立たない相反則不軌が発生するのが常識です。
長時間露光の相反則不軌では、多くの場合相反則で計算した露光時間では画像が暗くなるので、露光時間を長く補正して撮影する必要があります。
ただし、フィルムの種類ごとに補正値も異なるなど、露出の補正も難しく、カラーバランスも崩れるため、長時間露光が当たり前の星の撮影の難易度を上げる原因にもなっていました。
この相反則不軌がデジタルではなくなったのです。
今や、星撮影の露出は試しに撮ってみて、背面モニターで確認して決定というのが一般的でしょうから、フィルム時代の星撮影の露出決定の難しさは想像しづらいものがあります。
使用レンズ:SAMYANG AF35mm F2.8 FE
使用フィルター:Photoshop-「フィルター」-「ぼかし(ガウス)」-「2.5pixel」
◎焦点距離:35mm相当 絞り:F/2.8 シャッタースピード:30秒 ISO感度:800 (35mm判フルサイズのカメラで撮影)
フィルターでできることを後処理でという実験でPhotoshopの「ぼかし(ガウス)」をかけてみました。ソフトフィルターのような効果は得られません。
相反則不軌がなくなったことは、星撮影の難易度を大幅に下げてくれました。
おかげで多く方が手軽に星空や星景の写真を楽しむことができます。
いい時代です。
しかし、同じようにデジタル化でなくなったイラジエーションは、星を撮影するときには少し残念です。
イラジエーションはフィルムに強い光が当たると、光を受けたハロゲン化銀粒子が光を乱反射・拡散することで本来なら光の当たらない周りの粒子まで感光させてしまう現象をいいます。
よいことだけではないのですが、星の撮影についていえば、ソフトフィルターを使わなくても、フィルムで撮影すると明るい星ほど大きく、暗い星は小さく写るという効果を得ることができたのです。
フィルム面のハロゲン化銀粒子の乱反射で起こるイラジエーションは、当然デジタルでは起きません。
フィルムで撮影した星の写真のように明るい星ほど大きく、暗い星は小さくメリハリのある画像をデジタルで得るには、KenkoMC プロソフトン(B)Nなどのソフトフィルターを使うことになります。
ソフトフィルターには、強い光ほど大きくにじませるという特徴があるので、光の強い星は大きく、弱い星は小さく撮影することができるのです。
使用レンズ:SAMYANG AF35mm F2.8 FE
使用フィルター:KenkoMC プロソフトン(B)N
◎焦点距離:35mm相当 絞り:F/2.8 シャッタースピード:30秒 ISO感度:800 (35mm判フルサイズのカメラで撮影)
KenkoMC プロソフトン(B)Nを使って撮影したままのJPEG画像。この時点で星の大きさなどのメリハリが付いた画像になっています。
イラジエーションの起きないデジタルカメラで、星の明るさによって大きさが異なるフィルムのような描写で星空を撮影しようと考えるとソフトフィルターKenkoMC プロソフトン(B)Nなどを使うことが必須といえます。
ただし、ソフトフィルターを使うと、地上風景部分もぼけてしまうという弱点があります。
この弱点を私はあまり気にしていません。
ソフトフィルターを使用した星景写真では多く場合風景部分がシルエットに近い描写になることと、RAW現像時や画像の後処理の際にコントラストや明瞭度を上げる処理を行うため、さほど気にならないことが多いからです。
どうしても気になるときは、撮影時にフィルターありとなしを撮影しておくなどして、画像合成などを行います。
多くの方が、星を撮影するときにKenkoMC プロソフトン(B)Nなどのソフトフィルターを使うのは「星をぼかして大きくするため」と思っているようです。
しかし、本当の狙いは「イラジエーションの発生しないデジタルで、フィルムと同じように明るさによって星の大きさに差を付けて撮影するため」にソフトフィルターを使っているわけです。
夜空に瞬く無数の星のひとつひとつの明るさの差を大きさで表現してレタッチ処理を行うことは不可能とはいいませんが、現実的ではないでしょう。
画面に写る無数の星たちの光の強さを大きさに変換してフィルム時代と同じように撮影するには、KenkoMC プロソフトン(B)Nなどのソフトフィルターは必携といえるのです。
ぜひ一度試してみてください。