國政寛の感動表現|たのしくマスター! マクロ撮影術!(3)視点を吟味する
『春の主役』
~まばゆい光のシャワーを浴びて
春を告げるワンマンショー~
目の前に綺麗な花畑が広がっていたら、嬉しくてテンションが上ってすぐにでも撮影したくなりますよね。
もちろん、被写体を見つけて嬉しいという気持ちは大切です。
でもその気持ちのままに撮ってしまうのではなく、ちょっと深呼吸して一息ついて、じっくりと被写体を観察してみましょう。
虫の目になってみよう
自分が立っている高さから眺めてみても、ありきたりの風景しか見えてきません。
そんな時は視点を下げてみましょう。
しゃがんだり、時には寝転がったり、虫の視点になって花たちを見てみます。
そうすると、立ったままでは見えなかったものにいくつも気がつくことでしょう。
隠れていた花が見えたり、遠くの木漏れ日のきらめきが目に飛び込んできたり、見える風景が大きく変わるんです。
一面のチューリップ畑。
少し近づいてしゃがんでみると、花と花の間に小さなチューリップを見つけることができました。
さらに低い体勢になって花の隙間を覗くように見てみると、可愛い二人がこんにちはしていました。
被写体をじっくり観察しよう
視点を変えることで見つけた、これまでとは一変した風景に心躍らされ、早く撮りたい!
その気持はわかりますが、ここでもちょっと一呼吸。
被写体をじっくり観察しましょう。
目の前にある花が、その花の姿の全てではないのです。
ちょっと離れてみたり、思い切りグンと近づいてみたり。またまた虫の気持ちになっていろいろな角度から花にアプローチしてみます。
梅の花にレンズの最短撮影距離まで寄りました。
離れていては感じられない、幻想的な雰囲気です。
自分の真正面よりも、ちょっと斜め横から見るほうが美しいかもしれません。
アップで撮るより、離れて小さく撮ったほうが可愛らしさが表現できるかもしれません。
ぜひいろいろな角度から、じっくり観察してみてください。
ファインダー越しに見つめよう
ここから撮ろう!と決まったら、やっとファインダーを通して被写体を見てみます。
ファインダーを通してみると、肉眼で見た印象とは違って見えることも珍しくありません。
レンズが作り出すボケなど肉眼では見えなかったものが、ファインダーを通すことで見えるようになるからです。
肉眼で見ても、背景の柔らかな光の円ボケは見えません。
ファインダーを覗いてみて初めて気づくのです。
うっすらと虹色のキラキラが。
これもファインダーを覗いて見たからこそ写せた一枚です。
マクロ撮影の場合、ほんの数ミリでもカメラ位置を動かすだけで、花の印象がまったく変わります。
その印象の違いをじっくり見極めながら、慎重にカメラ位置を決めていきましょう。
脇役にも心を配ろう
花の撮影というと主役の花にばかり目がいきがちですが、主役をとりまく脇役も重要です。
物語でもそうですが、主役だけではお話は成り立ちません。
主役を際立たせてくれる脇役がいてこそ、主役が輝くのです。
背景や周囲にある花などをうまく利用して、主役である花が活きるような脇役を配置してあげましょう。
主役だけでなく脇役も、カメラ位置をちょっと動かすだけで大きくイメージが変わります。
同じ花をほぼ同じ場所から撮影した二枚。
ほんの少しだけ、カメラの高さを変えています。
それでも、これだけ背景が変わってくるのです。
慎重にカメラ位置を動かしつつ、主役だけでなく脇役にまで気を配って、どう撮るかを吟味することが必要です。
おわりに
一枚の花を撮るにも、いろいろ考えなくちゃいけないことがたくさんありますね!
ちょっと大変そうに思うかもしれませんが、日々の撮影で考えるように意識していれば、自然と身についてくるものです。
これからはぜひ、こんなことにちょっと意識しつつ花の撮影を楽しんでいただけたらと思います。