光川十洋の感動表現|「個性的な木陰花火」

花火は、夏の欠かせない風物詩です。今年のように強烈な暑さの中で、撮影する場所を確保するために、太陽がギラギラとするような時間帯でスタンバイすることは、過酷で危険を伴うこともあります。また、有料席が完売となって、撮影場所を求めてあちこちウロウロしている人をよく見かけます。努力が必要なのは花火撮影に限りませんが、少しでも快適に、しかも個性的な花火表現を望む写真愛好家へ、ここに提案をいたします。

ウラワザがあります! 木のウラに気が付きました。ここなら、花火が上がっても人がいません。つまり、待ち時間を気にせず、太陽が隠れて涼しくなってから、撮影場所を決めることができるのです。円形の花火が空中に浮かぶ絵柄は美しいのですが、昔からよくあるし、どこでも見かけます。ときには、花火を主役にしない「個性的な花火」を撮影してみませんか?自分なりに画面構成ができれば、感動表現、間違いなし、です。

さて、花火会場に行く場合、花火の高さや、木の状況など、撮影する場所が予測できないので、広角ズームレンズを推奨いたします。そのなかでも、12mm-28mm(APSサイズ用)というズーム比は、現地で応用の幅がありますので、とても安心です。

さらに提案をいたします。最近の花火は、以前より明るいし、頻繁に打ち上がります。風があると花火の筋も広がります。よって、短いシャッタースピードで撮影すると重なりが少なくなり、シャープです。この画像を後日「比較明合成(コンポジット)」で合わせて表現する時代と私は考えます。フィルム時代では想像することができない新技法です。KikuchiMagick  SiriusComp  StarStaX などのソフトを無料でダウンロードして利用します。白トビで悩む花火描写については、「困ったな、を解決。創作意欲が湧く!」方法であることをお伝えいたします。

花火が打ち上がり始める時間帯は、ブルーモーメント、空に明るさが残っています。いろいろな濃度で撮影しておき、後日好みの1点をセレクトします。暗い空と木のシルエットが主役になります。そのあと打ち上がる花火は、細かく分けて「要素撮り」して、「比較明合成」をします。

◎使用レンズ:Tokina AT-X 12-28 F4 PRO DX

焦点距離:27mm 絞り:F/13  シャッタースピード:1/5秒~10秒 ISO感度:100 10点を合わせた(APS-Cサイズカメラで撮影)

花火の打ち上がる場所を観察して、改めてフレ―ミングを確定します。花火の形を意識したシャッタースピードでこまめに「要素撮り」して、後日セレクトし、組み合わせます。

◎使用レンズ:Tokina AT-X 12-28 F4 PRO DX

焦点距離:28mm 絞り:F/16 シャッタースピード:2.1秒~5.7秒 ISO感度:100 26点を合わせた(APS-Cサイズカメラで撮影)

花火も佳境に入ると、時々動きの複雑な花火が登場します。円形描写の花火以外のシーンを集めて合わせてみました。より個性的に表現できました。

◎使用レンズ:Tokina AT-X 12-28 F4 PRO DX

焦点距離:28mm 絞り:F/16 シャッタースピード:1.3秒~15.5秒 ISO感度:100 10点を合わせた(APS-Cサイズカメラで撮影)

ラストに近い時に、白い花火の連発が続きます。多くの撮影者は、重なりすぎて白トビの失敗をする場面です。この時は、速いシャッタースピードで細かくたくさん撮影します。そのうちのいくつかに、色がついた花火も混ざります。その1シーンだけ見てみましょう。

◎使用レンズ:Tokina AT-X 12-28 F4 PRO DX

焦点距離:28mm 絞り:F/13  シャッタースピード:1秒 ISO感度:100 (APS-Cサイズカメラで撮影)

色のついた花火がないシーンを集めて、白い花火だけの描写をすると、白い光跡だけのスクリーンができました。モノトーン花火を背景に、木のシルエットが見事に浮かび上がった、感動表現です。花火写真の新表現としてこれからはやっていくこと、必至でしょう。

◎使用レンズ:Tokina AT-X 12-28 F4 PRO DX

焦点距離:28mm 絞り:F/13  シャッタースピード:0.6秒~1.5秒 ISO感度:100 17点を合わせた(APS-Cサイズカメラで撮影)