光川十洋の感動表現|花描写に遠近感

 桜情報が飛び交う春本番到来です。美しく育てたさまざまな花が各地で多くの人をひきつけます。花を愛でる観賞者が集い、撮影する人もたくさんいて、いろいろ工夫をしていることでしょう。花を撮影する場合は多くのバリエーションがあります。きちんとしっかり正面から撮り、背景の玉ボケを意識し、ときには前にグラデーションボケを活かし、また人によってはマクロレンズでクローズアップを狙い、さまざまな光線状態を味方にしたり、雨を待ったり……、と。花の描写に「遠近感」を加えてみませんか?

標準ズームレンズをお使いの人は、広角(ワイド)側を使って近づいてみてください。遠近感をさらに強調するのにうってつけのレンズがあります。今回は魚眼ズームレンズの活用です。単焦点の魚眼レンズが多い中で、ご紹介するのはズーム機能があるレンズです。しかも、ワーキングディスタンスが2.5cm。つまり、レンズの前面から2.5cmという近い所にピントが合うのです。絞り値も焦点距離17mmの場合は、f29の絞り値が使えますので、手前から遠くまでピントがよく合う被写界深度の深い描写が可能なのです。フィルム時代では「最小絞りでは、回折現象で画像が甘くなる」と避けてきたことですが、デジタルカメラ時代では、画像ソフトを適正に利用することによって、シャープネスを適用できるようになりましたので、被写界深度効果優先の場面では、最小絞りにも挑戦しました。それでは、早春の花をさがして、遠近感を意識した感動表現の描写を見ていきましょう。

 

 

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花を撮る基本は「日の丸構図」です。写真作品の講評会では「日の丸構図じゃ面白くない」と酷評される撮り方です。が、美しい花を見つけ、背景の状況を意識すれば、存在感を強く打ち出せます。離れた所に斑入りのツバキが咲いているので、ライブビューとAF(オートフォーカス)を利用して、暗い場所でしたが腕を伸ばして撮影しました。

 

◎使用レンズ:Tokina AT-X 107 DX Fisheye 10-17mm F3.5-4.5

焦点距離:17mm 絞り:F/16 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:2800 +1/3補正(APS-Cサイズカメラで撮影)

 

クリスマスローズは、背が低く、うつむくように咲くので、花の中をじっくり見たことがありませんでした。多くの種類があるようですが、このシンプルな清楚な感じは貴婦人と言ってよさそうです。淡い緑色の花に近づくことによって、ほかの色のクリスマスローズは背景となりました。

 

◎使用レンズ:Tokina AT-X 107 DX Fisheye 10-17mm F3.5-4.5

焦点距離:10mm 絞り:F/13 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:4000(APS-Cサイズカメラで撮影)

 

 

ベニバナアセビの花序は並んで数多く垂れているのですが、魚眼レンズ特有のたる型の歪曲効果により、ボリューム感と遠近感が出ました。上部に樹木を入れることにより、画としての構図もダイナミックになります。

 

◎使用レンズ:Tokina AT-X 107 DX Fisheye 10-17mm F3.5-4.5

焦点距離:10mm 絞り:F/10 シャッタースピード:1/160秒 ISO感度:200 -1/3補正(APS-Cサイズカメラで撮影)

 

 

一つの木から、紅白の梅が咲いています。梅の花の後ろのガクも美しく見えます。印象的な花のかたまりを探し、レンズ直前まで近づいて主役にします。絞りを絞ることによって、梅の木全体の状況が写り込んで、遠近感の表現ができます。右半分は日陰、左半分には夕陽が当たっています。

◎使用レンズ:Tokina AT-X 107 DX Fisheye 10-17mm F3.5-4.5

焦点距離:10mm 絞り:F/16 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:500 -1/3補正(APS-Cサイズカメラで撮影)

 

 

桜の開花直後は、木全体ではまだ寂しく見えますが、ぽっと開き始めた枝先に近づいて、魚眼レンズ10mmで撮影しようとすると、背景に余計なものが入ってきます。ズームレンズのいいところは、その場ですぐ焦点距離を変更することによって、画面構成を素早く決めることができます。13mmの最小絞りはf25。木全体を描写して、一つの枝先を強調できました。

◎使用レンズ:Tokina AT-X 107 DX Fisheye 10-17mm F3.5-4.5

焦点距離:13mm 絞り:F/25 シャッタースピード:1/125秒 ISO感度:560 -1/3補正(APS-Cサイズカメラで撮影)

 

 

ミツマタの花は、上から見ると白く、下から見ると、花の黄色が見えます。たくさんの枝先に同じようなサイズの花をつけるので、ポイントがなく描写してしまう花です。今回は、あえて一つの花に近づいて、花の状態がわかり、3つに分かれる枝ぶりを見せ、木全体もわかるアングルで構図を決めました。

◎使用レンズ:Tokina AT-X 107 DX Fisheye 10-17mm F3.5-4.5

焦点距離:10mm 絞り:F/20 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:1400 +1/3補正(APS-Cサイズカメラで撮影)

 

 

バイモというユリの仲間ですが、日陰の苔むした斜面に沿って咲いています。遠くに木の根がたくさん下の方に伸びてきています。この対比を見せるため、被写界深度を深くし、遠近感を活かして手持ち撮影をしました。

◎使用レンズ:Tokina AT-X 107 DX Fisheye 10-17mm F3.5-4.5

焦点距離:17mm 絞り:F/18 シャッタースピード:1/160秒 ISO感度:3200 -1/3補正(APS-Cサイズカメラで撮影)

 

 

今年は東京で桜の開花直後、雪が降り、南岸低気圧が通り抜けました。雨が降った後に、急に太陽が顔を出すと予想して出かけました。ボケの花には水滴がびっしり、乾かないうちに太陽がギラリ。またとない場面に遭遇でき、絞り込んで太陽の光芒を表現しました。

◎使用レンズ:Tokina AT-X 107 DX Fisheye 10-17mm F3.5-4.5

焦点距離:10mm 絞り:F/20 シャッタースピード:1/100秒 ISO感度:500 +1と

1/3補正(APS-Cサイズカメラで撮影)

 

 

ツバキの木の下には、ツバキ特有の落花が見えます。激しい雨脚のおかげで、泥が跳ねたあとがまれなタイミングを感じさせます。最初は曇りだったのですが、太陽光が射してきましたので、地面の遠近感に加えて、木陰の世界を表現することができました。17mmでは、最小絞りはf29となり、手前から遠方まで絵画で描き込むようなはっきりした描写ができました。

◎使用レンズ:Tokina AT-X 107 DX Fisheye 10-17mm F3.5-4.5

焦点距離:17mm 絞り:F/29 シャッタースピード:1/2秒 ISO感度:140 -1/3補正(APS-Cサイズカメラで撮影)

  

光川十洋(みつかわとうよう)

光川十洋(みつかわとうよう)

日本大学芸術学部写真学科卒。学研で創作分野歴任。現在クラブツーリズム、カルチャーセンター、写真団体の写真講師。日本写真講師協会(JPIO)認定フォトインストラクター

Tokina AT-X 107 DX Fisheye


遠近感描写にもってこいの魚眼レンズ。ズーム機能を活かして、余分な背景を整理できます。とくにレンズ前面2.5cmと近くにピントを合わせることができるので、主役を強調できます。