齋藤千歳の感動表現|趣味だからこそ単焦点を楽しむ

皆さん、撮ってますか!
カメラ・写真関連の電子書籍を出版している齋藤千歳です。
現在、デジタルカメラとミラーレンズ・Kenko MIRROR LENS 400mm F8 MF N IIにすっかりハマっています。
単焦点レンズの魅力を紹介していく本ブログですが、連載2回目の今回はなぜ交換レンズがほしくなるのかを、まず考えてみませんか。

筆者が考えるレンズキットで一眼カメラを買った方が交換レンズのほしくなる理由は大きく4つです。
⦁    もっとぼかして撮りたい。
⦁    もっと遠くを大きく撮りたい。
⦁    もっと近くを大きく撮りたい。
⦁    もっと広い範囲を撮りたい。
解決方法は
⦁    明るい単焦点レンズ
⦁    超望遠レンズ
⦁    マクロレンズ
⦁    超広角レンズ
となります。

レンズ交換式のカメラなら、交換レンズでさまざまな不満を解決できるわけです。
だからこそ、レンズ交換式だとも言えますが……。

今回は、交換レンズがほしくなる大きな理由のひとつ近くを大きく撮りたいが実現できるマクロレンズ・SAMYANG 100mm F2.8 ED UMC MACROを取り上げたいと思います。
 

使用レンズ:SAMYANG 100mm F2.8 ED UMC MACRO
◎焦点距離:100mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/40秒 ISO感度:200 +1 1/3補正(35mm判フルサイズカメラで撮影)

絞り開放のF2.8でぎりぎり近くまで近づいて撮影。そのため被写界深度が極めて浅くなっています。

 

マクロレンズは近くが大きく撮れるレンズだと紹介しました。
では、実際にマクロレンズとはどんなレンズなのでしょうか?
一般的には、最大撮影倍率が1.0倍(等倍、1:1などと表記されることもあります)から0.5倍程度のレンズと定義されることが多いです。(※1倍を越えるレンズもあります)
いきなり最大撮影倍率と言われても「???」だと思います。
最大撮影倍率は、カメラの撮像素子上に撮像素子と同じ大きさの範囲をそのまま写すことができるレンズを1.0倍と定義しています。
まったく意味がわかりませんよね。
35mm判フルサイズ(撮像素子のサイズ36×24mm)のカメラだと、ざっくりいうなら10円玉(直径23.5mm)が短辺側ほぼいっぱいに撮影できるレンズが1.0倍になります。
0.5倍だと短辺長の半分のサイズになります。
かなりアップで撮影できることがイメージできたでしょうか?

 

使用レンズ:SAMYANG 100mm F2.8 ED UMC MACRO
◎焦点距離:100mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/160秒 ISO感度:100  +2/3補正(35mm判フルサイズカメラで撮影)

大きく発生するぼけが楽しくて、開放でばかり撮影したくなります。しかも開放から描写がシャープなのもとてもいいのです。

 

最大撮影倍率1.0倍のマクロレンズは10円玉を画面いっぱいに撮れるほど、アップに強いレンズなのは理解できたと思います。
そして、小さなもの大きく撮るには、被写体に近寄る必要があります。
ほとんどのマクロレンズでは撮影倍率1.0倍で撮影するには、最短撮影距離(被写体にピントを合わせることができる、もっとも短い距離)で撮影する必要があります。
SAMYANG 100mm F2.8 ED UMC MACROの場合、この最短撮影距離は30.7cmです。
多くの100mmマクロでは30cm前後、50mmマクロでは20cm前後の距離で1.0倍での撮影が可能なレンズが多くなっています。
実は多くの方が勘違いしているのが、この最短撮影距離です。
レンズ交換式カメラの場合、最短撮影距離は被写体(ピントを合わせた位置)から撮像面(撮像素子やフィルム)までの距離を表記します。
そのため、コンパクトデジカメのようにレンズ先端からの距離を表記するものに比べて、近寄れないと思っている方も多いようです。
レンズ先端から被写体までの距離はワーキングディスタンスと呼ばれることが多く、だいたい下のような計算で距離が求められます。

最短撮影距離−(レンズ長+フランジバック長)=ワーキングディスタンス
※フランジバック長は、レンズ取り付け基準面(マウント基準面)から撮像面までの距離

SAMYANG 100mm F2.8 ED UMC MACROをキヤノンマウント機に装着した場合は

30.7cm−(12.3cm+4.4cm)=14cm

SAMYANG 100mm F2.8 ED UMC MACROを使って最大撮影倍率で撮影する場合は、レンズ先端からのワーキングディスタンスは約14cmと最短撮影距離の半分以下になります。
 

<使用レンズ:SAMYANG 100mm F2.8 ED UMC MACRO
◎焦点距離:100mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/1,250秒 ISO感度:100 (35mm判フルサイズカメラで撮影)

近接してマクロ的に撮影したタンポポ。絞り開放F2.8だが、レンズの明るさ以上に撮影距離が短いので驚くほどぼけるのがわかります。

 

マクロレンズが小さな被写体を画面内に大きく撮影でき、近接での撮影が楽しめるレンズであることは、スペックから理解してもらえたかと思います。
そしてスペック表には記載されていませんが、近接で撮影すると、なにが起きるかというと「ものすごくぼける」のです。
ぼけ(しっかりピントが合っておらずぼやけて見える範囲)が大きく発生するには、いくつかの原因があります。
多く方がご存じで有名なものは、レンズが明るい(F値が小さい)とよくぼけるというものではないでしょうか?
確かにSAMYANG 100mm F2.8 ED UMC MACROを含めて、マクロレンズは明るい単焦点レンズが多いのですが、近接撮影においてのぼけ方は普通ではないのです。
サクラの作例においては、実は中央部分3本のシベの内真ん中のシベの先にしかピントは合っていません。
また、タンポポの作例については、外から2列目のシベの2本にしかピントは合っていない状態です。
よく言われる被写界深度(ぼけずにはっきりと見える部分)が非常に狭いのです。
おそらく数mm、理論値だと100mmマクロの最短撮影距離でF2.8だと約2mmの範囲しかピントが合いません。
この驚くほどのぼけは、近接撮影時に発生します。
ぼけはカメラと被写体(ピントを合わせる場所)が近いほど大きく発生するという法則があります。
そのため、マクロレンズでの近接撮影では、普通の撮影距離では考えられない量のぼけが発生します。
この薄いピントと大きなぼけはマクロレンズ最大の魅力と言ってもよいでしょう。
だが、しかし、数mmレベルの被写界深度でどうピントを合わせるのでしょうか?
ここがマクロ撮影最大の難関であり、醍醐味(だいごみ)と言えます。

実は多くのユーザーが最後はマニュアルフォーカス(MF)でピントを合わせています。

マクロのピント合わせについては、これだけでブログ1回の文字量では足りないほど、さまざまなテクニックがあるので、またの機会とさせてください。
とはいえ、マクロレンズでの極限のピント合わせは、まだまだMFが主体です。
そのため、マクロレンズの多くはファインダーでのピントの見やすさを考慮して設計されています。
当然、MF専用レンズであるSAMYANG 100mm F2.8 ED UMC MACROは、MF前提のレンズなので、マクロレンズのなかでもピントの見やすさにこだわって設計されていると言えます。

ただ、近くから大きく撮れるだけではなく、近接撮影独特の大きなぼけは、職人技のようなピント合わせというハードルがあるにしても、ぜひ挑戦してもらいたいものになっています。
単焦点のマクロをレンズラインアップに加えると、肉眼ではとらえきれない小さな世界の美を印象的な大きなぼけといっしょに楽しめます。
さらに撮影を楽しむための1本として、ぜひ検討してみてください。

また、SAMYANG 100mm F2.8 ED UMC MACROでの多く作例やレンズの使いこなしについては電子書籍
『Foton機種別作例集123 フォトグラファーの実写でレンズの実力を知る SAMYANG 100mm F2.8 ED UMC MACRO 機種別レポート』
https://www.amazon.co.jp/dp/B071KBQHRL/
著:齋藤千歳/編:太田圭一・齋藤千歳 価格:330円
でも詳細に解説していますので、こちらもご覧いただけると幸いです。